ジルコニウム

原子番号40の元素

ジルコニウムラテン語: zirconium[4] ラテン語発音: [zɪrˈkoː.ni.ʊ̃ˑ] ズィルコーニウム、英語発音: [zɜːɹˈkoʊniəm])は、原子番号40の元素元素記号Zrチタン族元素の1つ、遷移金属でもある。常温で安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP) のα型。862 ℃以上で体心立方構造 (BCC) のβ型へ転移する。比重は6.5、融点は1852 ℃。銀白色の金属で、常温でアルカリに対して安定。耐食性があり、空気中では酸化被膜ができ内部が侵されにくくなる。高温では、酸素窒素水素ハロゲンなどと反応して、多様な化合物を形成する。

イットリウムジルコニウムニオブ
Ti

Zr

Hf
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号ジルコニウム, Zr, 40
分類遷移金属
, 周期, ブロック4, 5, d
原子量91.224
電子配置[Kr] 5s2 4d2
電子殻2, 8, 18, 10, 2(画像
物理特性
固体
密度室温付近)6.52 g/cm3
融点での液体密度5.8 g/cm3
融点2128 K, 1855 °C, 3371 °F
沸点4682 K, 4409 °C, 7968 °F
融解熱14 kJ/mol
蒸発熱573 kJ/mol
熱容量(25 °C) 25.36 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa)1101001 k10 k100 k
温度 (K)263928913197357540534678
原子特性
酸化数4, 3, 2, 1,[1]
(両性酸化物)
電気陰性度1.33(ポーリングの値)
イオン化エネルギー第1: 640.1 kJ/mol
第2: 1270 kJ/mol
第3: 2218 kJ/mol
原子半径160 pm
共有結合半径175±7 pm
その他
結晶構造六方最密充填
磁性常磁性[2]
電気抵抗率(20 °C) 421 nΩ⋅m
熱伝導率(300 K) 22.6 W/(m⋅K)
熱膨張率(25 °C) 5.7 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 3800 m/s
ヤング率88 GPa
剛性率33 GPa
体積弾性率91.1 GPa
ポアソン比0.34
モース硬度5.0
ビッカース硬度903 MPa
ブリネル硬度650 MPa
CAS登録番号7440-67-7
主な同位体
詳細はジルコニウムの同位体を参照
同位体NA半減期DMDE (MeV)DP
88Zrsyn83.4 dε-88Y
γ0.392-
89Zrsyn78.4 hε-89Y
β+0.90289Y
γ0.909-
90Zr51.45%中性子50個で安定
91Zr11.22%中性子51個で安定
92Zr17.15%中性子52個で安定
93Zrtrace1.53×106 yβ-0.06093Nb
94Zr17.38%> 1.1×1017 yβ-β-1.14494Mo
96Zr2.8%2.0×1019 y[3]β-β-3.34896Mo

名称

元素名は、宝石のジルコンアラビア語で金色を表す zarqun)が語源[5]

用途

原子力

ジルコニウムは金属の中で熱中性子吸収断面積が最小のため、ジルカロイと呼ばれるジルコニウム合金が原子炉燃料棒の被覆材料(燃料被覆管)や沸騰水型原子炉燃料集合体のチャンネルボックスの材料として利用される。燃料被覆管を形成する際には、原子炉に入れたときにα相(稠密六方格子)の底面に水素化物が析出しやすく、それが原因で被覆管が破損する可能性があるため、ロールダイスにより管を回転往復させながら圧延するピルガー式圧延法を用いる。沸騰水型軽水炉ではα領域内の高温 (580 ℃) で最終真空中で焼鈍した再結晶材を使用し、加圧水型軽水炉では再結晶が生じていない450 ℃程度真空中で焼鈍を行った歪み取り焼鈍材を使用する。

セラミックス

二酸化ジルコニウムは、白色顔料などに使われている他、圧電素子コンデンサーガラス差し歯や歯のブリッジボールベアリング、セラミックの刃物など、あるいは陽極酸化によって発色する特性を活かして宝飾品などに使われている。

歴史

1798年マルティン・ハインリヒ・クラプロートがジルコンから発見[5]1824年イェンス・ベルセリウスにより、フッ化カリウムジルコニウムをカリウムで還元することによって初めて金属分離された[5]1944年福島県塙町真名畑鉱山でジルコニウムの鉱脈が初めて発見される。第二次世界大戦中のことでもあり、国内で希元素が確保されたという点で話題となった[6]

ジルコニウムの化合物

酸化反応

高温での酸化反応、および陽極酸化反応は次式で表される。

同位体

国別の産出量ランキング

2011年における国別の産出量は以下の通りである(2011)[7]

順位ジルコニウム鉱の産出量(千トン)全世界での割合(%)
1オーストラリア762.047.0
2南アフリカ共和国383.023.6
3中華人民共和国150.09.3
4インドネシア130.08.0
5モザンビーク43.62.7

出典

外部リンク